こんにちは、FXトレーダーの黒鳥です。
きたる2020年11月3日(火曜日)アメリカ大統領選挙が行われますね。
私個人としては、トランプ氏は考えが単純で助かるのでそのままを少し期待していますが、アメリカ国民としてはどうでしょうか。
ビジネスマンとして、
「常にアメリカファーストを推し進めてきたトランプ氏」
民主党でオバマ氏の副大統領を務め、
「政界で重鎮となりつつある政治家1本のバイデン氏」
どちらが勝つのかに特に関心ははありませんが、ファンダメンタル分析においては無視が出来ない一大イベントですし、「市場がどう反応するのか」は気になりますので記事にしておこうと思います。
米大統領選が相場に与える影響と中長期の方向

上記を見てみると、選挙結果目前の11月7日には、それまで問題に挙がっていたクリントン候補の私用メール問題について、FBIが訴追を求めないと発表したことが起因でドルが上昇。特にドル円、クロス円はリスクオフの巻き返しから大幅に上昇し、104円台半ばまでドルが一時買われる動きを見せています。
11月9日の開票時に今まで有利だと思われていたクリントン氏を破り、トランプ氏の当選が確定すると金融政策への期待感から4円以上もドルが一気に急伸。
英国のEU離脱決定で「サプライズ」に慣れていたはずの市場にとっても、トランプ氏の勝利は意外感があった様相を呈しています。
これを言ってしまうと元も子もない話になってしまいますが、私は今回の米大統領選で大きな値動きが期待出来ないと予想しています。
あくまで現段階での話ですが、大統領選の結果に関わらず中長期的にはドル安方向にレートが動いていくと推測しているからです。
多くの人がどっちが勝つのかに注目している様ですが、私は正直どっちが勝っても構いません。
ではなぜ、本来一大イベントであるはずの大統領選挙が、今回相場に影響を及ぼすほどではないと私が提言できるのか。
それは、相対的に見て米大統領選が世に容れられない、アメリカが抱える大きな問題が3つあるからです。
1) 新型コロナウィルス
2) 米中貿易摩擦
3) 世界的な貿易戦争リスク
前回は事前調査でヒラリー氏が圧倒的な票数を獲得していた最中トランプ氏が当選するというビッグサプライズがありました。
今回は特にサプライズもなさそうですし、先述した上記3つの事柄を踏まえて相対的に見ても、市場も米大統領選の結果だけで大きく動く事は考えずらいと思います。
強いて言うならドル円で戻り売りを狙う戦略が良いのかなという印象です。
あくまで誤解を招かないように前提としてお伝えしておきますが、大統領選自体に相場を動かす要因がないわけではなく、それ以上に相場が反応しやすい大きなトピックスがあるからという理由に他ならないのでその点ご理解ください。
大統領選挙の現状

現アメリカ合衆国の大統領である共和党のトランプ氏と、オバマ大統領時代に副大統領を務めた民主党のバイデン氏。
簡単に言い換えると、
「世界中に知られている有名人VS退屈な政治家」
という構図に見えます。
利己的に自国を動かそうと考え、強気な発言を繰り返すトランプ氏には一定の支持層がいる事は間違いないでしょうから、彼の立ち振る舞いや外交姿勢はある種の確固たるリーダーシップであると捉える事が出来ます。
その中でも隠れトランプ支持者が多いと言われているのが「金融業界」と「マーケット」です。
バイデン氏は増税政策を公約にしていることが株式市場では短期的にマイナスの要因となります。
一方でトランプ氏は経済対策の柱である社会保障の財源となる給与税の免除を打ち出し、コロナで受けた自国のダメージを加味し景気回復が厳しい間の増税政策への反対を表明している。
ウォール街は右派寄りで確実な選択を好む傾向があり、通常は共和党の現職大統領に献金するのが必然です。
しかし、アメリカの世論調査においては「バイデン氏リード」との声が聞こえて来ていて、トランプ派として知られている”FOXニュース”も同様の報道をしています。
経済や市場という観点から見れば、バイデン氏の政策は“ネガティブ”に働きやすいものばかりなので、経済関連の政策や考え方で恩恵が受けられるのかについてが大きく票を動かす要因の一つと考えられるでしょう。
一点問題なのが一定の支持者がいるにも関わらず、トランプ氏は新型コロナウィルスに対する稚拙な対応、「Black Lives Matter」運動に対する無慈悲な態度や対応から、支持率を落としているという事です。
実際、現時点においてトランプ氏とバイデン氏の支持率には10%以上の開きがあり、先に述べた世論調査においてもバイデン氏がリードしていることから、今投票を行った場合、バイデン氏が勝利しそうという見解が多い様です。
しかしながら、選挙のある11月までまだ時間がある事が波乱を含んでいます。
バイデン氏は法人税増税、富裕層への増税を公約しており、株価的には圧倒的にマイナス。トランプ氏の経済政策を支持する層は厚く、トランプ氏が勝利する可能性はまだ十分残されています。
ランプ氏とバイデン氏の政策の方向性
11月3日(火)に行われる大統領選挙に向けて様々な情報や調査結果が出ていますが、信頼されている米Real Clear Politicsのサイトによると、バイデン氏が候補者としてほぼ確定した4月頃のトランプ氏との支持率の差は概ねバイデン氏支持が47-8%、トランプ大統領支持が42-3%と、5-6%ほどバイデン氏への支持が上回っている状況でした。
今年6月の調査ではバイデン氏とトランプ氏の支持率の差は広がり、現状ではバイデン氏が50%を超える支持を集め、トランプ氏の支持率は40%を割り込み始めました。
両者の差は10-15%近くになっており、ここまで来ると決定的な差にも見えてきます。
ここで両者の政策の違いと方向性を見ていきましょう。
候補者 | 経済再開 | 減税 | 貿易 | オバマケア | 対中関税 |
トランプ氏 | 可能限り早期の経済再開を呼びかけ | 景気回復が厳しい間、増税政策に反対と表明。 | 国内製造業の強化を望み、対中攻撃を継続する方針。 | オバマケアより有効で低コストな医療保険制度を表明 | 中国からの輸入品に県税をかけたが、貿易戦争は米国農家に打撃を与え、製造業の雇用に犠牲をもたらした。 |
バイデン氏 | 新型コロナ検査体制を強化せずに経済再開に警戒。 | 個人所得税の最高税率を37%から39.6%に戻す公約。 | 報復的な関税には反対。 国内製造業を拡大し中国への依存を減らしたい。 | 10年間で7500億ドル必要になる見通しで、バイデン陣営は富裕層への増税で財源を賄おうとしている。 | 農作物に対する関税は撤廃としているが、不当廉売だとする鉄鋼、また知的財産権の分野は強硬路線を取る方針。 |
現在、米国の失業保険申請数は、新型コロナウイルスによる影響で過去最大を更新しています。
米国の感染者数は中国を超え世界最多な状況で多くの人が雇用を失い、アメリカ国民は不安や怒り、恐怖といったネガティブな感情に蝕まれているのかもしれません。
このような状況で、原動力となり得る怒りの矛先を向ける共通の敵に対する内容がそれぞれの政策に組み込まれています。
トランプ氏が再選するには「全ての原因は中国にある」と国民に思わせることに成功すれば、再選の可能性も高まります。
バイデン氏は対中と国内問題に加え、これまでの不満が募っている国民を味方につける反トランプ政権までも政策に組み込んでいるので、指示する国民が多いのも判断材料としては有利な部分だと感じています。
確かに、新型コロナウイルス感染問題が出てくる前までは、米国株価指数も最高値を更新している状態が続いたので、ここで国民の関心を多く惹きつける政策、姿勢を示す事が出来れば有利になるのは明らかです。
これまでの大統領選挙の支持率と結果
前回のヒラリー氏とトランプ氏の選挙でトランプ氏がサプライズで当選した理由としては、実際の支持率と選挙における結果が違うという米大統領選挙の特殊性にあると考えています。
アメリカの選挙は各州で数が定められた選挙人を、州ごとの過半数を取った候補者が総取りする仕組みになっているので選挙人の数だけを比べると結果が予期せぬものになります。
「勝者総取り方式」と呼ばれる選挙人の数の配分方法を大半の州が採用しています。その州で1票でも多く票を得た候補者が、その州の選挙人を全員獲得できるというルール。
この「得票数」と「選挙人の獲得数」の逆転がトランプ氏がサプライズ的に勝利した理由です。
要するに総得票数を多く獲得した候補者が必ず勝つわけではないという事です。
実際に、2016年の選挙において、ヒラリー氏が獲得した総得票数は48.04%でトランプ氏の45.95%を大きく上回っていました。
ところが、実際に獲得した選挙人の数ではクリントン氏227人に対しトランプ氏は304人となりトランプ氏は第45代アメリカ大統領に就任しました。
今回の選挙でもトランプ氏はその特殊性を視野に入れて政策を打ち出していて、
トランプ氏が対中との貿易交渉において農産物購入額に重点をおいているのはここにあります。
ウィスコンシン州等の「農業州」と呼ばれる州が複数あるためです。
コーンベルト等もこれに該当します。
前回の経験から、各州の選挙人獲得のための動き方によって最後の結果が変わってきます。
バイデン氏有利と言われていますが、選挙までまだ3か月あるので最後にトランプ氏が逆転する余地はまだあると言えます。
まとめ
今回の大統領選は、一大イベントであるはずの米大統領選が霞んで見えてしまうほど、他に加味すべき大きな問題である
1.新型コロナウィルス
2.米中貿易摩擦
3.世界的な貿易戦争リスク
これらがあることで、大統領選挙単体が相場へ大きな影響を及ぼすとは現時点では考えずらいという事です。
上記の事から、シンプルに相場への影響を大統領選だけでは判断は出来ません。
しかし、あえて言うならトランプが勝てば短期的にはドル高、中長期的にはドル安になる傾向にあるといえるでしょう。
4年前には無かった様な複数の問題が出てきているので、今回は少し特別になるのでファンダメンタル的に複数の事象を加味して方向性を読んでいく必要が必ずあります。
総合的に判断して、いずれにしてもドル安。ドル円だったら戻り売りを狙いやすいと思います。
選挙の直前はちょっとした事で値動きする可能性があるので、心構えをしておく必要があります。
予め想定しておき、値動きに対してメンタルと自分の方向感をブレさせない事が重要です。